育った町には
饅頭を配る風習はかった
歌で名高い葬式饅頭を
初めて見たのはきょうの午後
悲しいときは地下にもぐるか
高いところにいきたくなる
今回選んだのは高い場所
ホテルの
四十一階のティールーム
モノトーンのウェイトレスは
西側の席に案内してくれた
晴れた日には西方浄土まで見えるという席
あいにくきょうは曇り空
近いところと遠いところに
かわるがわる目をやりながら
ミーさんは
亡くなった人のあれこれを話す
からだが軽くなったり
重くなったりしているのがわかる
「これ、おすそわけ」
手提げ袋をごそごそして
小さな
棺桶みたいな箱をミーさんは取り出した
紫色のふたを開けると
握りこぶしほどのお饅頭ひとつ
「ふたつはわたしが食べちゃった」
歌で名高い葬式饅頭
「ソーダー村の村長さんがー
ソーダー飲んでー死んだーそーだー
葬式饅頭うーまいそーだー」
子どものとき覚えたへんてこな歌がよみがえる
この世にあった葬式饅頭
田舎で生きてる母と弟に
白いぷりぷりした饅頭を
見せてやりたくて足踏みをする
曇った空もいつか暮れていき
ふたを閉めたみたいにそとは暗くなる
箱のこちら側でわたしたち
饅頭みたいな頭を見せあい
負けずに暮れていく
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